アンチエイジングや美容に良いとされる、いわゆる酵素飲料/食品の非科学がクローズアップされています。しかし別なところではまだ酵素と発酵食品と混同している人がいる?発酵食品に含まれる酵母と酵素は全くの別物と考えたほうが良いです。今回は発酵食品が良いとされる理由をまとめ、酵素との違いをわかりやすく解説します。
先日、季節の食養生をテーマに献立など具体的にご紹介していました。
更新後、いろいろと反響などもいただいたのですが、その中で私の友人との会話がありました。最近話題?の酵素の話になったのですが、どうも噛み合わない…。その友人もいわゆる酵素と発酵食品を混同しているよう…。
この話は、色々なところで指摘もあります。しかし、意外とまだ知らない人も多いのだなぁと思い、TULAでもこの点を取り上げようと思いました。
酵素は確かに身体に必要だが…
体内にはいくつかの酵素があり、人の消化や代謝は、酵素の働きによるものが多いということは広く知られています。
たとえば、消化酵素とは食べ物を分解して栄養に変える物質のこと。
そして、代謝酵素とは栄養をエネルギーに変えたり、アルコールなどの毒物を解毒したりする物質のことです。
つまり酵素は消化や代謝を促す物質なのですが、いわゆる酵素飲料や酵素食品は、この作用をアンチエイジングや健康に良いとする根拠としているようです。
では、その酵素を口から酵素を摂取してその効果が得られるか?というとそうではありません。
酵素を体外から摂取しても効果はない
酵素はたんぱく質の一種ですが、たんぱく質は身体に取り込まれた際、アミノ酸に分解されてから初めて栄養素として身体に吸収されます。
つまり、飲んだ酵素がそのままの形で体に取り込まれれば、消化や代謝を助けてくれるかもしれませんが、実際にはたんぱく質である酵素は、体内に取り込まれた段階で分解されてしまい、酵素を飲んでも効果があるという科学的根拠、医学的根拠はどこにもありません。※1
ここまでの話は他のメディアでも取り上げられていますから知っている人も多いでしょう。
次に疑問となるのが、発酵食品との違い。発酵には酵母が必要で、この酵母と酵素を混同していませんか?
発酵食品の利点と効果
まず発酵食品とは、酵母に含まれる微生物の働きで人間にとって有用な食べ物(反対に有害となるのが腐敗)へと変化した食品です。発酵により食材の風味が増したり旨味が出るだけでなく、保存性や栄養成分も高まり、体内への吸収率が良くなことが知られています。
また、こちらの記事でも紹介した味噌や納豆や漬物など日本古来の発酵食品は腸内環境を整える上で理想的であり、ヨーグルトなどの発酵食品により糖尿病のリスクが低減することがわかっています。※2
しかし、美容効果やアンチエイジング効果をうたう酵素飲料/食品は、この発酵と酵素を混同して説明しているように思えます。
発酵食品に含まれる酵素に効果があるわけではない
冒頭に説明した友人との会話で感じたのですが、「発酵食品 = 酵素飲料/食品」という図式が出来上がってしまっているようでした。
確かに発酵には、酵母が必要となり、微生物が増えていく過程で酵素が生まれています。そのため、発酵食品は酵素が多く含まれているので身体に良い影響を及ぼすと勘違いしているようでした。
しかし、先述した通り、ここで生まれた酵素を口から摂取しても身体には効果を与えません…。発酵食品が良いとされるのは、発酵過程で生まれる酵素の働きで、食材そのものを分解してくれているから。つまり、私たちが食事で摂取する前に、微生物が食材を分解してくれているので、すでに消化・吸収しやすい状態になっているからです。
発酵食品と酵素は別物と考えたほうがいい
発酵食品に酵素が含まれていることは確かなのですが、その酵素が身体に良い作用をもたらすかというとそうではありません。少なくとも、酵素を口から摂取して身体に良い影響を及ぼすという印象を与える酵素食品/飲料と、発酵食品は別物だと理解しておいたほうが良いですね。
アンチエイジングや美容などを考える上で、食事や栄養に関するリテラシーを私たち自身が高めていかなければならないと思う今日この頃です。
参考: